星乃トラコは眠りたい。

小説を書いて一発当てて犬を飼って寝て暮らす。それがわたしの最終目標。

あるふたりの兄弟のこと、並びに情報屋見習いの近況

プロメテウス、という男をご存知でしょうか。

結構有名なので、名前だけは皆さまいろんなところで聞いたことはあると思います。何かの製品名が彼にちなんでつけられたとかね。

こいつはギリシャ神話に出て来る男で、まあ神様なんですが、当時人間には禁じられていた「火」をアポロン操る太陽という戦車から盗み出し下界に与えたため、罰としてコーカサスの山に縛り付けられて毎日肝臓をタカだかワシだかにつつかれ食われている(なお1日経つと再生する無限ループ)という話が特に有名かと思われます。

さて、彼には弟がありまして。*1弟の名はエピメテウス、と言います。

これまたプロメテウス以上に有名であると思われる女、名を「パンドラ」といいますが*2、彼女を娶って妻にしたのがこのエピメテウスであります。

ところでこの兄弟、その名の由来から見ますと、兄プロメテウスは「考えてから行動する者」、弟エピメテウスは「行動してから考える者」みたいな意味になります。転じてそれぞれ「熟慮する者・先見の明のある者」「後から後悔する者」みたいな扱われ方になっています。だいたい想像つくかと思いますが、神話中では切れ者で人格高潔な兄と愚鈍な弟という位置づけです。

 

 

 

 

何が言いたいかというと、トラコは圧倒的に弟タイプなんですねこれが。

トラコは今情報屋をやっているのですが、例えば人から何かデータを出して資料にしてくれと頼まれたとします。すると特に何も考えずそれをやっちゃいます。トラコの部署の業務の範疇でもあるので本当になーんも考えず別に誰にも相談せずにまずやっちゃいます。

で、結果出したあとから「勝手にやるな」と叱られる。と。

しかも悪いことに、トラコは何がまずくて叱られるのかわからないことが多いのです。

お叱りをくださるのは言わば現場業務の先輩格、トラコ以外に情報屋として勤めている1人なのですが、しかしお叱りをくださるのはこの人だけなのです。

言うまでもなく情報屋を統括する課長とか部長とか副社長とかそういう「より上の方々」もいるのですが、彼らからはお叱りはあまり頂かないのです。彼らから来るのはせいぜい「この前のは良く出来ていたが凝りすぎ。もっと未加工なデータでもよい」というような注意で、作業そのものをやったことを叱られたことはないのです。

頼まれごとは情報共有するルールであり、またそのためのツールといいますか、社内掲示板?みたいな仕組みがありますので、当然トラコはそこに内容は出してみんなが確認できるようにしています。

でもその先輩は口頭報告がなかったと言って怒るのです。それも、全案件についてではなくて、トラコの不在時に先輩が伝言を受けたとか、そういう件にだけ「自分も関わったのだから報告を受ける必要がある」と怒るのであります。

しかし先輩自身はとてもお忙しそうで、しょっちゅう席を外していらっしゃいます。何より、先輩とは業務分担が結構キッチリ割れているので、報告したところで先輩が行なう作業等は何もないのであります。

自分に関わりが何にもない作業でも、口頭で報告が欲しいものなのでしょうか。トラコは日々混乱するばかりであります。よよよ。

というのは無論タテマエで、混乱の日々はとうに過ぎており、現在に至ってははっきり言ってこの先輩格の干渉が苦痛であります。

トラコ宛に正規の手続きを踏んで舞い込んで来た依頼をトラコが処理して返すことの何が問題なのか、全く以って理解不能です。不在時に伝言役をしていただくのはありがたいですが、逆にトラコも先輩の不在時に電話を受けて伝言するくらいしょっちゅうですし、そのいちいちについてどうなったかの口頭報告をしてもらっても逆に困ります。

 

 

 

 

しかし、ああしかし。

トラコはタイプで言うならエピメテウス、「行動してから考える者」であります。

トラコの人生経験から言うとエピメテウスは想像力が広くも浅く、「実際に事態に巻き込まれてみるまでわからなかった」という哀しいパターンが多々あるものです。

つまり、トラコは今こうして先輩に腹を立てていますが、先輩の側からすれば何かトラコの動きを逐一チェックしなければならないような必要性があるのかもしれません。

世界はトラコの想像も及ばず思いもつかない、「その発想はなかったわ」な一面を山ほど持っているものであります。

トラコとしてはせいぜい優秀なる兄タイプを見習って、行動する前に熟慮を重ねようと、とりあえずは冷戦状態を維持して時間を稼ぐつもりであります。

 

 

 

時々考えることがあります。

まず、愚鈍なるエピメテウス、「まずやってみる、行き詰まったら考える」トラコですが、神話と異なりトラコは少なくともそんなに評判は悪くはないのです。

先に述べた上司の評価も決して致命的に悪いわけではないです(たぶん)。まためんどくさがりで何でも簡易化・自動処理化して定期作業はほったらかしにしようとたくらむトラコの性格が完全に吉とでており、あちこちで微妙に重宝がられております。

トラコは不思議でならないのです。

まず取り掛かる性質のエピメテウスは、どうしてあんなに酷評ポジなキャラなのでしょうか?

なんと言うか、パンドラの件といい本当に軽はずみに行動してろくなことしやがらない男みたいな扱われ方なのですが、本当にそんな奴だったのでしょうか?

あまり詳しいことはわからないのですが、何だか彼が愚鈍である理由として「他の兄弟に能力を取られた」みたいなキナ臭い記述があったりもします。

また神話の世界では、土着の言い伝えに出て来る神様などが、その土地が外部の民に征服されることで、神話中でも貶められたり神格を下げられるというのはよくある話です。彼ら兄弟も元々はティターン神族、ゼウスらメジャーなギリシャ神話の神々より前からいた神様の血族であります。

つまり、ひょっとしたら、今日我々に伝わっているエピメテウスの姿は、実はかなりdisられた後のものじゃないか、本当はそこまでひどい奴ではなかったのではないか。

というか人間は普通プロメテることってそう簡単に出来ないもので(熟慮の結果が常に正しい行動に結びつくとしたらそれはもう熟慮っていうかマジの予知だし、初めて或る状況に直面するときとかに熟慮は効果を発揮しづらい)、エピメテウスを愚鈍キャラに置くのはなんか違わないか?

と時々もやもやしてしまいます。

 

そしてもうひとつ。

もしもトラコがプロメテウスであれば。

そしたら今みたいなトラブルは回避できてもっと快適に働けたのでしょうか?

しかし、賭けてもようござんすが、仮にトラコがプロメテウスであったなら、このエピメテウストラコが身につけているスキルの99%ほどは手に入れることは出来なかったでしょう。ポケモンについての記事など見ると明らかですが、プロメテウストラコはかなりの確率でああいう行動は取らず従ってああいった人生も歩まず、もはやトラコとは似ても似つかぬ別人として生きていくこととなったでありましょう。

それを思うと、これまでグチグチと綴ってまいりました先輩格がどうのこうのなどというアホらしいトラブルの回避のために、この人生丸ごと否定するのは本末転倒ってレベルじゃねえぞという話であります。

と言うわけで、Webにまたひとつデブリを放つことになりますが、うんざり案件はここに書き捨て、これからノンビリ週末を楽しむことにいたしますです。

敬具。

 

 

 

今週のお題「私のタラレバ」

*1:兄もありまして兄は兄で大地を支え続けるとかとんでもない責め苦を負っていたりしますがここでは割愛します。弟の話です。

*2:例の箱の持ち主、あのパンドラです

「保護なめんな」とオバマケアの行方

小田原市がいろいろと話題になっております。

http://b.hatena.ne.jp/entry.touch/www3.nhk.or.jp/news/html/20170117/k10010842921000.html

トラコ的にはまったく他人事じゃありません。

トラコは放ったらかしとくと何時間でも眠れる、もとい眠りすぎる・眠気が去らない病気であります。

治療とかしないと日常生活に支障を来すものであり、病院に泊って受けるタイプの検査をやって、その結果から診断が下りているので、少なくともこれは法的には「体質」でなく「傷病」として取り扱われる状態のものです。

今は薬で症状を抑えています。薬をちゃんと飲んでいれば、少なくとも8時間くらいのフルタイム勤務プラスときどき残業くらいなら、差し当たっては問題なくこなせます。

しかし薬で症状を抑えるというのも、いろいろと厄介ではありまして。

言うまでもなくカネはかかるし、副作用と闘わねばならないし、薬の飲み合わせにも気を使わねばなりません。

そしてトラコが最大級に恐れているのが、「薬に耐性がついてしまうことがある」という現実であります。

この病気は今のところ保険適用されている薬が少なく、っていうかそもそもメカニズムが不明なので効くと言える薬自体が少なく、今飲んでるヤツ(副作用がもっとも緩やかとされているヤツ)が合わなくなったらトラコは詰む。

そしたら生活保護一直線であります。

きっといろんな人が言うでありましょう。

『眠いだけなんて病気じゃない』『いくらでも眠れるなんて羨ましい』『寝てるだけの奴に生保なんて出すな』。

しかし実家の世話にはなりたくない。というかなれない。要介護者いるとこにさらなるゴクツブシを戻してどうするという話です。

そもそも薬が効かないとなると車の運転が絶望的、そして地方で車が使えないのは足がないに近い。

さらにさらに、この病気を診られる医者がいない。少ないんじゃなくて居ないのです。少なくとも県単位では探しても検索にかかりません。

この病気に出す薬はちょいと特殊なものもあって、今トラコが飲んでるやつとかは診断が下りた患者に専門の医師が処方せねばならないものです。医師は医師でも専門でなければ処方箋が書けない。

仮にこの薬が効かなくなって地元に帰ったとする。で、今後もし新しい薬が開発され保険認可されたとして、トラコはその薬にありつくことができるのでしょう、か?

新薬発売の情報は(ラッキーにも)得ることができたとしても、処方を受けるために毎月地方から東京通い?

眠りつぶれる病人がひとりで?

しかし、では東京で生保を受けるか、ということになると、三年寝太郎どころか五年十年寝太郎に税金が支払われることを、果たしてひとはよく思うものだろうか。

っていうかトラコ自身があんまりそういう状況に耐えられそうにない気もします。自分ではどうしようもない状況に陥り、かつそれを人様から延々責められている気分で24時間365日、三年五年十年。あダメだ普通にメンタル病むわこれ。

トラコは精神が貧弱なので、まだ薬に効き目はあるんだから、と自分で自分をごまかしていつもこの辺で想像を打ち切ります。

しかし現実は非情である。ときとして最も嫌な想像が現実化すること、それどころか思いもしなかった最悪の事態などが現実の状況として発生しうることを、人は知っています。

今、トラコは薬は効いていますが、血圧が妙に高止まりしているという副作用っぽい現実に直面中です。健康体と言えば健康体だけれども長期的に見てこの血圧の数値は芳しくない。っていうか目覚まし薬の他にも飲まないと暮らせない薬があるんですけどそっちが高血圧者への処方は可能な限り回避みたいな薬で主治医が渋い顔したりしている。

目覚まし薬も変えねばならないかもしれない。帰るったって選択肢は多くなく、そもそも今飲んでる奴が副作用が一番小さい奴と言われているので変えた薬にえらい目にあわされる可能性は結構ある。

戦々恐々とする日々です。




で、

ついにトランプ大統領爆誕ですねアメリカ合衆国

オバマケア、撤回の可能性高めですね。

もうね、トラコは涙がちょちょぎれる思いですよ。

毎日薬を飲まねばならない身としては医療保険がどんだけありがたいか身に染みているわけで、仮にトラコが米国で生まれていたらもう詰んでいるわけです。

そして、トラコはこの点ラッキーにも米国じゃなくて日本国に生まれて今はいろいろ助かってますが、米国にはトラコと同じように薬で救われてる人とかたくさんいるだろうにと、もうそう思わずにいられないわけです。

でもトラコはドがつくレベルの貧乏人で、とてもそんな人らに何かしてあげるとかそういう余裕はない。



口惜しい。



こういうときトラコの脳裏に浮かぶ映像があります。

よくNASAとかが公開してそうな、渦巻き銀河の宇宙写真です。

たくさんのきらきらした粒のひとつひとつが銀河系で、我々の住む地球とかはその粒のひとつのそのまた一惑星なわけで、その地球にヒトが70億くらいひしめいている。

正しく「自分は塵のひとつぶだ」と思い知るとき、よくトラコはこの美しい銀河の写真を思い浮かべるのです。ほぼ自動的に。

多分脳みそが己の無力さに打ちのめされすぎないように自己防衛的に用意するんだと思うんですが、その美しさに癒されてはならないのに、どうもこの映像が浮かぶと、「ここは広大な、本当に広大な場所なんだ。自分は本当に本当にちっぽけなんだ」と言うことを感覚で納得してしまうんですよね。

それで口惜しさは悲しみになってしまう。

そして何もできないことをしくしくと受け入れてしまうのです。




そんなわけで、ほぼ眠り潰れていたというのに、起きているときはずっとものがなしい日曜日でありました。



早くも8日、今年が過ぎる。

えー、松の内も過ぎてからでナンでございますが、あけましておめでとうございます。ご無沙汰を重ねております、トラコでございます。

相も変わらずのポケGO三昧ですが不思議不思議、正月の魔力にやられたかモチをここぞとばかりに喰いまくっていたらいつのまにか腹が三段鏡餅のごとくになってしまい*1、よしここは一日一個たまごを孵化させることにしようぞさすれば日におよそ5kmは移動することになりモチのごとき腹もそのうち引っ込んで「似てるのはモチモチ美肌の手触りくらいのもの」ってな具合になりましょうぞと意気込んではみたものの本日などは氷雨もそぼ降り結局孵化どころか家から一歩も出ないままにこの時間であり、やあ情けなや情けなや。

せめて電池切れを起こして寝落ちる前に、無沙汰しのぎに今年の目標なんぞ自分のために書いていってみたりして。

と言いますのも、去年から手配していたブツがついに本日届いてしまったのですねえ。

 

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なにこれプラ板かなにか? みたいな写真ですが驚くなかれ、これでノートPCです。

LG Gram Core i-7 15インチのシャンパンゴールドモデルでございます。

15インチ画面なのにフチが薄いので筐体自体は14インチ台で通るぐらいのサイズ感(らしい)であり、そのサイズを活かしてノートの身でありながらテンキー標準装備であり、何を隠そう総重量が1kgを割ってるというテクノロジーの結晶体みたいなスペックで2016年下半期、一部で話題をかっさらったと思われるヤツであります。

届いた箱を開けてみて、つまみ出してみてびっくりした。

軽い。

本当に軽い。もちろん薄い。何せ比喩でなしに「つまみ出」せたのであります。

あまりにも華奢でちょっと引く。なにこれ怖い。ブチ折りそう。

いやうつくしいんです、大変スタイリッシュなパソコンなんであります。

ただ本当に軽いわ薄いわで、完全に自分の想定を上回っていたのでビビりぬいております。

なんか今日雨だし~外寒いし~聞くところによればみぞれかなんか降るみたいだしィ~とグダグダしているうちにこいつが届き、そのままテンション高くこれをセットアップしたりあれこれいじったりして遊んでいたらたまご孵す暇もなく一日終わってしまった。という本日でありました。

で、なんで突然こんなものを買ったのか、ということなんですけれども。

実はトラコ、部署異動をしておりまして。

新しい部署では情報屋をやることになったのです。

それで、その修行をするべく奮発して貯金をぶっこんでしまったのであります。

 

情報屋と言いますと、ざっくり言うとなんかこう、映画とかドラマとかでいろんなとこ行っていろんな人と交渉とかして血で血を洗ったりしてくる人というイメージですね。

ああいう人が実在してるかはともかく、彼らもまた情報屋であることは確かです。情報屋、正確に言うと「情報を(命がけで)抜いてくる屋」でありますね。

トラコもまたそういった人々の仲間入りをしたのであればこれは大変にドラマティック、もはや小説を書いている場合ではなく小説世界を生き抜かねばならない身でありまして、っていうかこんな眠気に勝てない病持ちで情報すっぱ抜いてくる屋とか無理じゃね? 遠回しなリストラじゃね? ということになりますが幸か不幸かそうではありません。

トラコは「情報を生成する屋」になることになったのであります。

これもざっくり言いますが、要するにエクセルとかエクセルとかExeclとかを駆使して、いろんな数字を計算して、表とかグラフにして人に見てもらうという仕事だという話です。

21世紀に突入してから15年以上経つというのにそんな作業で正規の雇われ人としてカネもらっていいのか、というかそれはまともな作業なのか、トラコは確かにエクセルは扱えるが何の資格も持ってないド素人、そのド素人にできるような仕事なのか、仕事量とかが尋常じゃなかったりするんじゃないだろうか、やっぱりこれは遠回しなリストラというか非正規への雇用転換の前触れ的なヤツなのではないかとか、不安の種は尽きないどころかじゃんじゃん発芽して大輪の花畑と化しているところですが、そんな花畑を眺めていても仕方がない。もともとマカーであったトラコですが仕事で使うようになってからWindowsマシンもほしい、特にVBAとか勉強できる環境がほしいと思うようになっていたこともあり、今回清水の舞台から投身するに至りました。

いやあ高うございましたよ。なんせ米国Amazonから転送かけて個人輸入する羽目に相成りました。どうしてLGさんは国内でi7モデルとかゴールドのヤツ売らないの…? ひょっとしなくてもアレですか? 今年新モデルに力入れていくとかそういう流れで、トラコは最新機種と思って型落ちまで秒読みのヤツを苦労して買っちゃったとかですかね…? 既にタッチスクリーンデフォ装備のヤツが発表*2されてるし、これアレですか、キーボードもちゃんと日本語対応のヤツがおいおい出てくる流れですか?

いや、でもそんなの待ってはいられない。タッチスクリーンはトラコ的には需要がないし、オーバースペックで価格だけ上がられても困る。今回そこんとこは納得尽くで買ったのだから、とりあえずは他所の青い芝は見ないふりして、目の前のこの黄金のノートPCに惚れ惚れしておきたく思います。

 装飾が金ぴかだというだけじゃなくて、いつかこいつに実際に金を産んでもらうのだ。ウフフ。

とりあえずトラコはVBAの修業がしたいし、「へびつかい」にも興味があるし、っていうかこんなめっちゃ軽くてちゃんと動くノートPCがあるんだからどこにでも持ってって空き時間とかに小説を書きたい。

というわけで、今週のお題「2017年にやりたいこと」でございました。

*1:とは言え、過去記事見たらむしろ食えなくて困ってたくらいなのでその点だけは良いことだと無理やり肯定してみる

*2:http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/1037575.html

siaとLady GaGa

えー、大変にご無沙汰しています、トラコでございます。

ポケモン20周年で思い出などのんびり綴っておりましたら、あれよあれよと言う間にポケGOだサンムーンだアローラのすがただとすごいことになって参りました。もちろんトラコも配信日からアカウント作って以来マジで毎日GOしております。東京23区におりながらそれでやっとレベル25というあたり、ヘボトレーナーっぷりが20年の時を超え再現されて鬱。ジム戦勝てなくはないんですが居座れない。CPが1000台後半以上にならないんですがジム制覇してる人々はどうやって3000超えとかゲットしてるんでしょうか。育成か?普通に育ててるのか?砂浜が星の砂で出来ているという某島とかの出身ではないか??

さてそんな折ですが敢えてポケモンじゃない話を書く。

それは最近ハマってる歌手の話であります。

 

The Greatest (feat. Kendrick Lamar)

The Greatest (feat. Kendrick Lamar)

  • シーア
  • ポップ
  • ¥250

 

siaという人です。

ジャケの人は本人でなく、PVが有名なバレリーナ兼ダンサー。sia絡みでは過去作「Chandelier」のPVで有名になった方で、今たぶん14歳?もう15?

siaはこのヘアスタイルがアイコンみたいな感じで(インタビューかなんかで顔出ししないって話と絡めて「(このヘアスタイルの)カツラをかぶれば誰でも、何でもsiaになる。その辺の猫でも」みたいなことを言ってたはず)、PVにはだいたいこういうキャラ(色違い含む)が出る。個人的にCheap thrillsのあのオッサンが好きすぎる。カッコ良すぎだろうなんだあのサタデーナイトフィーバーのキメっぷりは。

それはともかくこのシルエット。

誰かに似ている。トラコは思いました。

 

 

Telephone (feat. Beyoncé)

Telephone (feat. Beyoncé)

 

誰かっていうかこの写真が一瞬で思い浮かぶ。

そう我らがレディガガ、何故か日本では様付けで呼ばれているアーティストです。新作のJOANNAからテイストが変わってビビった。トラコはどっちかというとJudasくらいまで期派です。未だにPaparazziめっちゃ聴いてる。

共通点がそんなシルエットしかないんですが、sia実に良いです。実に良いんです。

どう良いかって結構GaGa的なベクトルに良いんですが、実はGaGaよりも撤退してるというのが個人的にはとても面白くて琴線に触れます。

 

 

順を追って説明します。

スタンスの話です。

GaGaの音楽は人を楽しませるのと同じような扱い方で人を勇気づけるとか闘いを応援する的なことをテーマとして持ってます。Judasあたりだと顕著というかストレートにそんな感じですが、思いつくだけでもそれより前のAlejandroからでもそうですし、単に自分がマイノリティ側だと表明するというだけだったらTelephoneのPVが既にそうだと言えましょう。

そして歌におけるGaGaの姿勢は、「大丈夫、あなたは一人じゃない」的なものです。GaGaと「あなた」(基本的に聞き手だけどheとかsheとかの出現の仕方もする感)とが歌の中の世界観にいて、「あなた」をエンハンスする。寄り添うソングなのですね。

そしてsiaですが、基本顔出しNGでやってるお方でしてこの人も「力づける歌」で人気という印象です。前提として普通に曲が良いのですが、この「力づけ」方がGaGaと明白に違って面白い。

どう違うかというと、siaは基本的に自分で自分に言い聞かせてるんですね。

享楽に溺れる過去作から徐々に「わたしはまだ大丈夫」「わたしはちゃんと生き延びた」ときて、そして冒頭で紹介したThe Greatestにてはっきりと「わたしには偉大でいる権利がある、その価値がある」と結実してきているわけで、これがトラコ的にはたまらないのです。

偉大でいる権利がある(I'm free to be the Greatest)、というのはトラコの意訳ですが歌詞中のフレーズで、この「偉大」というのが、例えばノーベル賞を取るとかそういう偉業を成したことに限ってはなく、「私は(私なりに)精一杯全力でちゃんとやってる」ということを指しているというのが、たまらない。

わかりやすい偉業に彩られているわけじゃない、という意味で「普通」である自分の人生を、精一杯全力で、生きる。

という風に書くとなんか薄っぺらいのですが、歌詞(とsiaの経歴や過去作)を見ていただくとわかると思うんですがもちろんこれは単なる綺麗事でなくちゃんと含むところがあって、「お前には出来っこない(事実あのときできなかったじゃないか、今これができてないじゃないか)」「無駄だ」「邪魔だ」「そんなことをやろうなんて馬鹿だ、迷惑だ」という有形無形の圧力が前提されているのであります。

その抑圧に刃向かうこと、何かをやり遂げようとすること、生き遂げようとすることを「諦めないで(Don't give up)」と繰り返し歌いかけるのです。

自分で、自分に。

一般に自分で自分を賞賛することは自画自賛とされてカッコ悪い的に扱われがちですが、しかし自画自賛には他人からの賛辞には決して持ち得ないリアリティがひとつある。

それは、人間関係から世界の万人を締め出したとしても唯一残る証人としての目撃証言の重みであり、本当に本当の意味で「大丈夫」と「あなた」に言い得る「最後のひとり」のリアリティであります。

それは同時に「あなた」を全面的に認め寄り添い、赦しさえすることができる唯一の存在でもあるわけです。

そのひとりからのエールソング。としてThe Greatestは聞くことができる。

どうですか、このものすごい閉じこもりっぷり。

良し悪しの問題でなく、Lady GaGaにはこれはちょっとできない芸当です。GaGaの歌はこれよりはもう少しフレームアウトしていて、「(社会の中に居場所がないと感じている「あなた」に宛てて)そんなことない、大丈夫、あなたはそれでいい、わたしがついてる」というメッセージとなっているというものなので、必然的にここまで自分自身にだけフォーカスし続けることはできない。

ただsiaのスタンスが大変に危ういのは言うまでもなく、これは「自分vsそれ以外のすべて」の構図を正当化・強化することに繋がりうるもので、独善とか独裁とか容易に肯定し得ます。ヒトラーが敵対勢力をどう潰すかに悩みながら自室で聞くことができなくもない歌なわけです。

そして、トラコとしては、まさにそこがたまらない。

アナ雪ブーム、英国のEU離脱、米国大統領選挙などを見るに、「自分ではない誰かとうまくやっていく」が行き詰まったというか、少なくともこれまで式の「うまくやっていく」ではうまくやれない立場・状況が、社会のいろんな局面で顕在化しているという印象を受けます。とはいえどちらかというとこれらの問題は他国のそれであるという印象がなくもないのですが、では翻って日本に限りますと、老々介護や介護殺人さえ引き起こしている少子高齢化、是正されずにずるずる来て東大卒の人材を身投げさせた違法労働、保育園が足らなくて働きたくても働けない人間がいるかと思えばねほりんぱほりんしてみたら給料安すぎてこれまた働きたくてもやってけないので働けない実態にぶち当たるという日本死ね問題など、これはこれでまた別の地獄絵図が出現、そして国の内外問わず幅広い範囲をカバーしエキドナのごとく種々の悪感情の産みの親となっている最悪のラスボスすなわち経済格差問題もあるという、箇条書きマジックも相まって「いや、真面目にこれどうすんの??」みたいな昨今であります。

世の中そんなんだとみんな余裕がないので、基本的に「他人を助ける」ということの難易度がものすごい勢いで跳ね上がってしまい、逆に「他人のダメなところをdisる」ことの難易度がめっちゃ下がってきています。ということはつまり他人からdisられる頻度も上がりやすくなっているわけで、「助けが必要だけど頼れる人はいない」的危機に個々人が陥りやすくなっている。

もはや自分以外の人間は(敵ではないにしてもその人自身の事情で手一杯で)助けになれない(し状況が転がればいつマジな敵対者になるかもしれない)。どうするーー?

っていう抑圧まみれな環境で必死でもがいている人ほど、siaの「自分自身に言い聞かせるソング」はビビるほどハマってくるのだと思うのです。

「大丈夫。

私はダメじゃない。

やれることはやっている。

走り続けて息切れする、目を閉じたくなる、ああ今また新しい困難の山が。

それでも、

"I got stamina."

わたしはタフだから」。

痺れるじゃあありませんか。

もうトラコはずっと痺れっぱなしなのです。